2026.1.8

ZEB義務化とは?対象建築物と基準、求められる省エネ対策を解説

ZEB義務化とは?対象建築物と基準、求められる省エネ対策を解説

近年、国が掲げる2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)実現に向けて、建築分野でも省エネ化と脱炭素対策が強く求められています。

その中核となるのが、省エネ基準の義務化とZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進です。

2025年度からは、すべての新築建築物で省エネ基準への適合が義務付けられ、2030年度までには、新築建築物の平均でZEB水準(ZEB Ready相当)の省エネ性能を確保することを政府方針として目指すとされています。

これは、これまで中大規模ビルに限られていた省エネ基準の対象が、住宅や小規模建築物にも拡大される脱炭素社会における大きな制度改正となります。

本記事では、ZEB義務化の背景や対象建築物の種類、適用される基準、そして企業や設計者が今から備えるべき省エネ・再エネ対策について解説します。

ZEBとは?

出典:環境省「ZEBポータル

ZEB(ゼブ)とは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略で、建物の快適性を保ちながら、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにする建築物を指します。

省エネ設備によってエネルギー使用量を減らす対策と同時に、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して創エネを行うことで、建物全体で消費と創出のバランスを取るのが特徴です。

ZEBは、単に電力を削減するだけでなく、炭素排出の抑制や災害時のレジリエンス向上、運用コストの見直しなどを通じて、環境と経済の両立を実現する脱炭素建築モデルです。

そのため、国はZEBを「脱炭素社会に向けた建築物の新たなスタンダード」と位置づけ、普及を強力に推進しています。

ZEBには、一次エネルギー消費量の削減率に応じて4つの段階が設けられています。

以下の表は、環境省「ZEBポータル」に基づく公式定義をもとに整理したものです。

区分 定性的な定義 定量的な定義(削減率・条件)
ZEB(ゼブ) 省エネ+創エネにより、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなる建築物。 再生可能エネルギーを除き50%以上削減
再生可能エネルギーを含め100%以上削減
Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ) ZEB Readyの要件を満たしつつ、再エネでゼロに近づけた建築物。 再生可能エネルギーを除き50%以上削減
再生可能エネルギーを含め75%以上100%未満の削減
ZEB Ready(ゼブ・レディ) 外皮の高断熱化と高効率設備で、省エネを実現する建築物。 再生可能エネルギーを除き50%以上削減
ZEB Oriented(ゼブ・オリエンテッド) 原則として延べ面積10,000㎡以上の大規模な非住宅建築物を対象 建物用途により30~40%以上削減(再生可能エネルギー除く)、
かつ未評価技術の導入が条件

出典:環境省|ZEBの定義

なぜZEBが注目されているのか

出典:国土交通白書

ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)が注目されている最大の理由は、2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)実現に向けた国の中核施策として位置づけられているためです。

日本政府は2020年に「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」と宣言し、2021年の地球温暖化対策推進法改正では、脱炭素の実現を基本理念として法的に明記しました。

この中で特に課題となっているのが、オフィスや商業施設などの業務部門からのCO₂排出量です。
産業部門では1990年以降に排出量が減少している一方、業務部門では約1.5倍に増加しており、建築物のエネルギー性能向上が求められています。

そのため政府は、

  • 2030年度までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減
  • 業務部門ではエネルギー起源CO₂を約50%削減

という目標を掲げ、建築分野では新築建築物のZEB化を強力に推進しています。

ZEBの普及は、単に環境負荷を下げるだけでなく、電力価格の高騰対策や、災害時の非常電源確保など企業の経営リスク低減にも直結します。

また、省エネ・創エネ技術の導入が進むことで、建築物の資産価値向上や脱炭素経営の実現にもつながる点が注目されています。

こうした背景から、ZEBは「環境対策」だけでなく、「炭素排出削減を軸とした経営戦略」の一部として導入が加速しており、政府は2030年度までに、新築建築物の平均でZEB Ready水準の省エネ性能を確保することを目指しています。

ZEB化の導入メリット

ZEB化には、多くのメリットがあります。
炭素排出の削減をはじめとした環境負荷の軽減はもちろん、エネルギーコスト削減や事業継続性の向上など、脱炭素経営の推進にも直結する効果が期待されています。

CO₂排出削減による環境負荷の低減

ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を導入する最大のメリットは、建築物からのCO₂や炭素排出量を大幅に削減できることです。

日本では、エネルギー消費全体の約3割を「住宅・建築物分野」が占めています。とくにオフィスや商業施設などの業務部門では、1990年度比で約1.5倍にCO₂排出が増加しており(環境省「ZEBポータル」)、産業部門の排出量が減少するなかで、建築物におけるCO₂削減対策やエネルギー効率化対策が大きな課題となっています。

ZEBは、建物の断熱性能や機器効率を高めてエネルギー使用量を抑える「省エネ」に加え、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して自ら電力をつくる「創エネ」を組み合わせることで、一次エネルギー消費量の実質ゼロ(またはマイナス)を目指します。

たとえば、ZEB Readyクラスでも一般的な建物に比べて50%以上の一次エネルギー削減が可能とされ、完全なZEBでは、建物の運用段階でのCO₂排出をほぼゼロにすることができます。
この結果、環境負荷の低減だけでなく、脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩であり、持続可能なエネルギー供給体制を支える対策としても注目されています。

エネルギーコストの削減

ZEBでは、断熱性能の高い外皮設計や高効率な空調・照明・給湯設備を採用し、建物全体のエネルギー使用量を従来のビルに比べて30〜50%以上削減することが可能です。
たとえば、ZEB Readyレベルでも省エネ効果が顕著で、年間の電気代を数十%抑えられた事例も多く報告されています(環境省「ZEB実証事例集」より)。

また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを併用することで、電力会社からの購入電力量を減らし、エネルギー価格変動のリスクを低減するとともに、炭素排出の抑制にもつながります。

エネルギー価格が高騰しやすい近年の状況では、ZEBのような自立型エネルギー建築が、脱炭素経営の実現と安定した経営基盤の両立を支える有効な手段となります。

災害時のレジリエンス強化

ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)は、省エネや環境負荷の低減だけでなく、災害時に強い「レジリエントな建築物」としても注目されています。

近年、地震や豪雨、台風などによる停電被害が全国で多発しています。一般的なビルでは停電と同時に空調・照明・通信設備が停止しますが、ZEBでは太陽光発電や蓄電池などの再生可能エネルギーシステムを併設しているため、外部電力に頼らずに最低限の電力を自給できる構造になっています。

さらに、災害時の事業継続計画(BCP)対策として高く評価されており、実際に自治体庁舎や医療施設など公共性の高い建築物では、ZEB化を「防災インフラ」として導入する事例が増えています。

企業価値・ブランドイメージの向上

ZEBの導入は、省エネや環境対策にとどまらず、企業価値やブランドイメージの向上にも大きく貢献します。

環境省や経済産業省のZEBロードマップでも、ZEBを「カーボンニュートラル社会を実現するための重要なインフラ」と位置づけており、自社ビルや店舗をZEB化することは、脱炭素経営に取り組む企業としての社会的責任(CSR)やESGへの対応姿勢を明確に示すものとされています。

さらに、環境報告書や統合報告書などでZEB化の取り組みを明示することで、投資家・株主・顧客に対し、脱炭素への具体的なアクションを示すことができ、「環境に強い企業」「持続可能な企業」としての評価を高めることが可能です。

ZEB義務化の対象建築物

ZEBの導入はこれまで任意の取り組みとして進められてきましたが、近年は法改正や政府方針の強化により、段階的に「義務化」へと移行しています。

2022年に改正された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」では、これまで中・大規模の非住宅建築物に限られていた省エネ基準適合義務の対象を、2025年度から、すべての新築建築物(住宅・非住宅)に省エネ基準適合義務を適用することが定められました。

さらに、国の「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策ロードマップ」では、2030年度までに新築建築物の平均でZEB/ZEH水準の性能確保を実現することを目指す方針が示されています。

このように、ZEB化はもはや一部の先進的建築にとどまらず、すべての事業者・設計者が対応すべき新たな基準へと変わりつつあります。

ここからは、ZEB義務化の対象となる建築物の種類や基準について整理していきます。

対象となる建築物の種類(非住宅・オフィス・商業施設など)

ZEB義務化の対象は、主にオフィスビルや商業施設、学校、病院などの「非住宅建築物」です。
これらの施設は電力・空調・照明などのエネルギー使用量が多く、業務部門のCO₂排出量全体の約2割を占めていることから、政府はZEB化を最優先で進める分野と位置づけています。

また、国土交通省の資料(※「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的な方針」改正案)では、2025年度からはすべての新築建築物(住宅・非住宅)に省エネ基準適合を義務化し、2030年度までにZEB/ZEH水準の性能確保を目指す方針が明記されています。

さらに、環境省の「ZEBロードマップ」では、オフィス、病院、ホテル、百貨店など電力使用密度の高い建物を、ZEB化を優先的に進める主要分野として位置づけられており、早期の取り組みが求められています。

区分 主な用途 延べ面積基準 〜2024年まで 2025年度以降 2030年度までの目標
大規模非住宅 オフィスビル、庁舎、病院、商業施設など 2,000㎡以上 省エネ基準への適合義務(既に実施) 義務継続。ZEB Ready・Oriented水準の導入を推奨 ZEB基準へ
中規模非住宅 学校、宿泊施設、工場、物流施設など 300〜2,000㎡ 省エネ性能の届出義務 適合義務化(2025年度施行) ZEB Oriented/Ready水準を目指す
小規模非住宅 飲食店、店舗、診療所など 300㎡未満 対象外 新たに適合義務化(2025年度施行) ZEB Ready水準を目指す
住宅系建築物 戸建住宅、共同住宅 規模問わず 省エネ基準への努力義務 適合義務化(2025年度施行) ZEH基準(再エネ導入を含む)へ
公共建築物 国・自治体の庁舎、学校、地域施設など 規模問わず 新築時のZEB Oriented相当を目標(政府実行計画) 率先的なZEB化の推進(ZEB Ready相当を目指す) 新築建築物の平均でZEB Ready、可能な限りZEB化を達成

※政府は、2030年度までに新築建築物の平均でZEB Ready水準の性能確保を目指すとともに、それ以降はZEB・ZEH水準を標準とする段階へ移行する方針を示しています。

出典:国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的な方針」/環境省「ZEBロードマップ

新築・増改築・既存建物の扱い

ZEB義務化の対象となるのは、原則として新築されるすべての建築物(住宅・非住宅)です。
2025年度から施行される改正建築物省エネ法により、建築主は新築建築物を建てる際、省エネ基準への適合を義務づけられ、高い省エネ性能を実現するための対策が求められます。

従来は一部の大規模非住宅(延べ面積2,000㎡以上)のみ義務化されていた対象が、小規模な店舗や住宅を含むすべての新築建築物に広がります。

また、増改築(増築・大規模改修)を行う場合にも、省エネ基準への適合義務が課されます。
具体的には、増改築部分の延べ面積が300㎡以上となる場合など、一定規模以上の改修を行う際には、省エネ基準への適合が求められます。

一方、既存建築物そのものに対しては、現行制度上は省エネ基準への適合義務はなく、改修時の努力義務に留まります。ただし、改修や更新の際には、省エネ性能を向上させるよう努めることが求められており、政府は補助金制度や技術支援を通じて既存建築物のZEB改修(ZEB Renovation)による炭素の排出削減の実現を後押ししています。

このように、2025年度以降は新築を中心に義務づけが進み、増改築や既存建物についても段階的にZEB基準の実現に向けた省エネ対策・エネルギー対策・脱炭素対策が進められる仕組みとなっています。

ZEB義務化のスケジュールと段階的導入

政府は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建築物分野でのエネルギー消費削減を重点施策と位置づけています。

この方針のもと、建築物省エネ法の改正(令和4年法律第69号)と、国土交通省告示第971号により、2025年度からすべての新築建築物に省エネ基準適合を義務付け、2030年度までに新築建築物の平均でZEB/ZEH水準の性能を確保することを目指すロードマップが示されています。

まず、2025年度からは、延べ面積2,000㎡未満の中小規模建築物や住宅も新たに義務化の範囲に加わります。
その後、2030年度に向けて、ZEB ReadyやZEB Orientedといった高水準の省エネ性能の実現に向けた取り組みが段階的に進められる予定です。

また、公共建築物は先行的にZEB化を推進しており、2030年度までに新築建築物の平均で同等レベルの省エネ性能を目指す方針が示されています。

このように、ZEB義務化は「すべての新築建築物への省エネ義務化」からスタートし

年度 対象建築物 義務・目標の内容 主なポイント
〜2024年度まで 延べ面積2,000㎡以上の非住宅建築物 省エネ基準への適合義務(すでに実施済) 大規模ビル・商業施設などが対象。その他は努力・届出義務。
2025年度〜 すべての新築建築物(住宅・非住宅) 省エネ基準への適合を義務化 中小規模建築物・住宅も新たに対象。設計段階で適合確認が必要。
2030年度以降 新築建築物(住宅・非住宅) ZEB/ZEH基準の性能の実現を目指す 新築全体でZEB・ZEH水準を標準化する段階へ。

ZEB義務化に向けて企業が今からできる対策

ZEB義務化の流れは、大企業だけでなく、中小規模の事業所や店舗、工場などにも広く影響します。

今後は新築時の設計段階から、省エネ基準やZEBレベルを意識した建築計画が求められるため、早期に体制を整えておくことが重要です。
ここでは、ZEB義務化に備えて企業が今から取り組める主な対策や準備のポイントを整理します。

ZEBプランナーへの相談

ZEB化を検討する際は、まず「ZEBプランナー」への相談が有効です。ZEBプランナーとは、環境省が登録するZEB設計・導入の専門家(法人)であり、建築設計・設備計画・補助金申請などを総合的に支援してくれる専門機関です。

ZEBプランナーに相談することで、建物の規模や用途に応じた最適なZEBレベルの設定や、導入コスト・省エネ効果の試算、再生可能エネルギー設備の導入可否などを具体的に検討することができます。

また、国や自治体の補助金・支援制度の活用条件や申請手続きもサポートしてもらえるため、初めてZEB化に取り組む企業でも安心です。

ZEB義務化の流れが進む今、設計段階からZEBプランナーと連携し、将来の基準引き上げにも対応できる建物計画を立てておくことが、企業にとっての重要な一歩となります。

ZEB Readyレベルの設計採用

ZEB化を進めるうえで、まず目指したいのが「ZEB Ready」レベルの設計です。
「ZEB Ready」とは、省エネ技術や高効率な設備を導入し、再生可能エネルギーを使わない状態で一次エネルギー消費量を50%以上削減した建物を指します。

Z2030年度以降、すべての新築建築物にZEB水準の性能確保が求められることを踏まえると、現時点で新築や大規模改修を検討している企業は、この水準を前提とした設計を採用することで、将来的な法改正や基準引き上げにも柔軟に対応できます。

Z同水準の建物は、長期的な運用コスト削減や企業の環境価値向上にもつながり、補助金や税制優遇の対象となる場合もあります。

省エネ設備・再エネ設備の導入

ZEB化を実現するためには、建物の断熱性能を高めるだけでなく、エネルギーを「使う量を減らす」「創る量を増やす」両面からの対策が欠かせません。その中心となるのが、省エネ設備と再生可能エネルギー設備の導入です。

省エネ設備としては、高効率空調・LED照明・高断熱サッシ・人感センサー照明・全熱交換換気システムなどが代表的です。これらを適切に組み合わせることで、建物全体の一次エネルギー消費量を大幅に削減できます。

さらに、太陽光発電設備や蓄電池、地中熱ヒートポンプ、再エネ電力の導入など、再生可能エネルギーを活用する仕組みを組み合わせることで、ZEB ReadyからNearly ZEB、さらにはZEBレベルへの移行が可能になります。

国・自治体の補助金を活用

ZEB化を進める際には、設計費や設備導入費などの初期投資が発生しますが、国や自治体の補助金制度を活用することで、費用負担を大きく軽減することができます。

国の主な支援制度としては、環境省による「ZEB実証事業」や、経済産業省による「省エネルギー投資促進支援事業」「先進的再エネ等導入促進補助金」などがあります。

※いずれも2025年度分の公募はすでに終了しています。次回の募集は、例年どおり春ごろ(5〜6月頃)に公募開始される見込みです。

これらの制度では、ZEB Ready・Nearly ZEBレベルの設計・施工費の一部を補助の適用範囲に含まれており、中小規模建築物や既存建物の改修にも活用できる事例があります。

また、東京都・大阪府・愛知県などの自治体でも、再エネ設備導入や高効率空調・照明更新への独自補助金が設けられています。年度ごとに条件や対象が変わるため、早めに最新情報を確認することが重要です。

まとめ

ZEB義務化は、2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けた建築分野の最重要施策のひとつです。

2025年度からは、すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化され、2030年度までに、ZEB ReadyやZEB Orientedといった高水準の省エネ性能を新築建築物の平均で確保する段階へと移行していきます。

また、増改築や既存建物においても、省エネ性能向上やZEB改修の取り組みが推奨されており、企業・自治体・設計者が連携して、炭素排出の削減とエネルギー効率化の両立を進めることが期待されています。

今後は、省エネ設計や再生可能エネルギーの導入だけでなく、ZEBプランナーなど専門家の支援を活用しながら、段階的にZEB基準へ対応していくことが重要です。